2009/11/20

栄光なき勝利


昨日、アイルランドとのプレーオフを制し、2010W杯本選出場を決めたフランスですが、同点ゴールの際のアンリのハンドが国内外で話題を呼んでいます。
アイルランド国民の怒りは理解できます。
試合内容からいっても、明確なコンセプトのもとに、持てる力を出し切って戦うアイルランド代表に対して、アンリとアネルカの能力だけに頼った戦術ゼロのフランス代表は、どうひいき目に見ても、「勝利に値する」チームではなかったことは、事実だ思います。
そんなフランス代表の唯一の得点がハンド絡みともなれば、アイルランド代表を応援する人たちは、それは怒るでしょう。

ただ、フランス国内においても、アンリのこのプレーに対しては批判的な声が多いのが少し気になります。
哲学者のフィンケルクロートも、ラジオで「遺憾な勝利だ」と述べていましたし、その他にも、「美しい手(ハンド)だ」と揶揄するキャスターや、「(予選突破に)満足してもいいが、誇りには思えない」とコメントするキャスターもいたりして、とにかく、アンリに対する風当たりの強さを感じます。
「Le Monde」紙の記事の一部を引用します。
街の片隅の小さな盗みがいつも警察の目を逃れるように、アンリのハンドがいつも世界中の審判の目を逃れてくれるといいのだが。サッカーはスポーツであり、スポーツは正しくあるために存在するわけではない。最もよい選手が勝つわけでもないし、最も倫理的な選手が勝つわけでもない。審判の過ちもあれば、コーチングの間違いもある(ドメネク監督はそのスペシャリストだ)。ドーピングする選手もいれば、いかさまをする選手もいる。さて、これらのことはそんなに深刻な問題だろうか?
すごい皮肉ですね(笑)。アンリは窃盗犯、あるいはいかさま師呼ばわりです。
当のアンリは、「ハンドはあったよ。でも僕は審判じゃない。だからプレーを続けたんだ。」と、反則を認めています(これも開き直りのセリフと受け取られているようですが)。
まあ、実際に試合をテレビで観ていた僕も、一瞬、「アンリ、何やってんだよ!」と心の中で叫びましたが、その後のアンリの複雑な表情や、試合後にアイルランド代表の選手のもとに声をかけに行っている様子などを見て、「ああ、アンリも傷ついているのかな」と思い直しました。

僕は一サッカーファンの目で、「いろいろあるよね」と思うだけですが、もしかしたらフランス国民にとっては、「恥ずべきだ」という思いが先に立つのかもしれません。
とはいえ、アンリのプレーがOKとは思わないにしても、それでも、ここ数年不振にあえぐフランス代表に力を最大限の注いでいる32歳のキャプテン(彼が所属するバルセロナのファンのなかにはその点を不満に感じている人も多いくらいです。もっとバルサに集中しろ、と。)に、もう少し敬意があってもいいんじゃないかな、と思います。



この一連のネガティブな報道で個人的に救いだったのは、「私の位置からはよく見えなかった。大事なのは予選突破。われわれはそれをやってのけた。」と、自分のチームのキャプテンを庇いもせずにけっこう自分勝手なコメントを発したフランス代表ドメネク監督とは対照的に、不穏な空気を焚きつけるようなメディアの報道に対して、「審判でも選手でも監督でもミスをする可能性はある」と、逆に審判やアンリを擁護する発言をしている「名将」の誉れ高いアイルランド代表ジョバンニ・トラパットーニ監督(左写真)です。
大人の態度ですね。試合中は髪を振り乱しながら、情熱的に指揮していたのが印象的でした。彼の怒りは、むしろ、ぐだぐだになった延長戦のシステムに向けられていて、90分で決まらなかったらPKに即突入すべきだ、と主張しているようです。

2 件のコメント:

  1. どうも、ブログの引っ越しおめでとうございます(?)。
    ちょっとヨーロッパサッカーシーンから目を離していた隙に、アンリのハンド問題、結構なおおごとになってますね。
    後で映像見ましたが、確かに100%ハンド、しかも手でボールの位置を調節してる(笑)。しかし、プロサッカー選手としてプレーしている以上、審判が止めない限りプレーを続けるのは当然だと思うので、アンリは一切悪くないですよね。なのでフランス国内でアンリへの批判が強いというのには驚きました。国民と監督が擁護してあげないとアンリが可哀想すぎます。

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  2. コメントありがとうございます。
    プレーを止めるだけではなく、自分で審判に「ハンドしました」と告げるべきだったとか言っている評論家もいますが、そんなサッカー選手見たことない(笑)

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